ブッタの教えと怪我しないヨガ④~自己不一致を正しく見る~

私は、レッスンの中で時々生徒さん同士お互いにアサナ(ポーズ)の写真や動画を撮り合ったりしてもらっているのですが、

「思ってたんと違う~」「もっと出来てると思ってたのに~」

という感想がほとんどなのです。

人間は生きていくために【正常性バイアス】というものが備わっています。

正常性バイヤスとは、「正常化の偏見」と呼ばれる心理学用語の一つで、日常生活の中で、予期しない事態に対峙した際に「うっそ~」「信じられへん」「そんなはずないやん」という心理状況に陥りやすい人間の特性のことを指しています。

例えば、新型コロナウィルスの感染に対しても「自分だけは感染しないだろう」となんの根拠もない心理=正常性バイアスが働くことで感染が拡大してしまったのも原因の一つだと思います。

また、災害時や緊急事態にも「これくらいならまだ大丈夫だろう」と事態を重くとらえず逃げ遅れてしまい悲しい結果になることも多々あります。

何かが起こる度にいちいち反応していると精神的に疲れてしまうので、人間はそのようなストレスを回避するために自然と“脳”が働き“心”の平安を守る作用が備わっているのです。

曲がった松の木をまっすぐに

とんちの一休さんで有名な室町時代のお坊さん、一休禅師のお話にこんなのがあります。

ある時、村に立ち寄ると、そこには一本の曲がりくねった松の大木がありました。

そこで村人達を集めて、一休禅師が質問をしました。

「誰かここにある松の木をまっすぐに見ることができる者はおるか?まっすぐに見た者には褒美をやろう。」と。

村人達は、何とかまっすぐに見ようと必死であちこち色んな方向から松の木を眺めてみます。

遠くから見たり、寝転がって見たり、みんなどうにかして曲がった松の木をまっすぐに見ようと智慧を絞ります。

でも、どこからどう見てもその松の木は曲がっているのです。

ある一人の村人が

「いやぁ~、この松はどこからどう見てもグニャグニャに曲がっているなぁ~!」とボソッと一言呟きました。

すると、それを聞いた休禅師が

「そのとおり!あなたがこの松を“まっすぐに見た”。あなたにご褒美をあげよう。」

曲がりくねった松の木は、曲がりくねっているとありのままに見ることがまっすぐに見るということです。

私たちは先入観(正常性バイアス)で物事を見てしまうと、ありのままの姿を見失ってしまいます。曲がった松の木は、曲がったままがそのままの真実の姿です。

仏様の眼で見た時、初めて真実が見えてきます。

正しく見ることで苦しみから離れる

仏教(ブッダの教え)の基礎に四聖諦(ししょうたい)という教えがあります。

○苦諦(くたい)・・・苦しみを明らかに見る

○集諦(じったい)・・・苦しみの原因を知る

○滅諦(めったい)・・・苦しみが無くなった状態

○道諦(どうたい)・・・どうすれば苦しみがなくなるのか

その中で道諦として教えられたのが、八正道という教えです。

八正道とは、苦の滅に導く八つの正しい実践徳目。

①正見(しょうけん)・・・正しい見解

②正思(しょうし)・・・正しい思惟(しゆい)

③正語(しょうご)・・・正しい言葉

④正業(しょうごう)・・・正しい行い

⑤正命(しょうみょう)・・・正しい生活

⑥正精進(しょうしょうじん)・・・正しい努力

⑦正念(しょうねん)・・・正しい思念

⑧正定(しょうじょう)・・・正しい精神統一

の八つを言います。

自己不一致を正見

八正道の最初に出てくる【正見】とは、物事を正しく見るということですが、この正しく見るというのは、【あるがままに見る】ということです。

あるがままに見るとはどういうことだと思いますか?

自分の都合や執着、こだわりを横に置いて、素直なそのままの姿を見ていくことです。

この「あるがまま」に対して「わがまま」な見方があります。

我がままというのは、自分の思いや我に合わせてということです。

【自己不一致】というのは、あるがままの自分と自分の我に合わせた自分とが一致していない状態と言えるでしょう。

あるがままの自分と自分はこうあるべきだと思っている自分のずれに気が付き(自己洞察)、こうあるべきだという思いやこだわりを手放して、本来の自分を受け入れる(自己受容)というように自分自身を正見するということが自己一致であり自己受容ということになります。

私たちの苦しみや悩みは、この自己不一致から発生していますから、正見することは、その苦しみや悩みから離れる第一歩となります。

還暦は60年で生まれた干支に還るため、赤ちゃんに戻るという意味から赤いちゃんちゃんこを着てお祝いするという風習が芽生えましたが、

60年もの長い間生きてきて様々な経験を得て、改めて子供の頃のように素直な気持ちになって正しく見ることが人として成長するために必要だという『気づき』なのかもしれませんね。

Yogaの練習の中でも、

「こんなはずじゃない」「もっと出来るはず」と自己不一致から怪我をされる方が多いです。

怪我をしないヨガを実践していく上で大切なことは、レッスンの最初に、

座りやすい姿勢で目を閉じてゆっくりとご自分の心と体の“今”を正しく見ることです。

毎日心と体は変化していきますから、その変化を俯瞰して気づいていきましょうね。

「この豊かな呼吸、穏やかで健やかな毎日、そしてすべてを許せる寛容な心がレッスンが終わった後もず~っと続きますように。」(私がレッスンの最後に言う言葉です)

セルフケアヨガインストラクター Yuka

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