ヨガ八支則(はっしそく)とはヨガの聖典「ヨガ･スートラ」の中に出てくるヨガ哲学の基本的な教えで、パタンジャリ師(インドに実在されてた人物)がヨガを8つの段階に分けて解説してます。
八支則の8の数字＝サンスクリット語で「アシュタ」ということから「アシュタンガヨガ」と呼ばれるようになったといわれています。
ではこれから、ヨガの知識（そもそもヨガって何？ヨガの効果とは？）・実践を深めていく上で大切な『八支則』8段階の説明をしていきます。
8つのステップそれぞれを解説
「八支則」と聞くと難しく考えてしまいそうですが、それらを日々の生活に取り入れることで自然と身近なものに変わります。精神力を鍛えることができ、ヨガを通して自分を成長させていきます。
八支則を学び、日常生活で使えるヨガ的人生の生き方のヒントを見つけていきましょう！
まずは8つの古代インドの言葉、サンスクリット語と日本語訳をご紹介します。
①：ヤマ(禁戒)
日常生活において行わない方がよいこと
②：ニヤマ(勧戒)
日常生活において行った方がよいこと
③：アーサナ(坐法)
座って瞑想していくために、カラダを整えること（ヨガのポーズ）
④：プラーナヤーマ(調気・呼吸法)
意識的に呼吸を整えることで心を自分の呼吸に沿わせること
⑤：プラッティヤハーラ(制感)
カラダの感覚をありのまま感じること
⑥：ダーラナ（集中）
今の感覚に心を添わせること。心が今にとどまることを学んでいる段階。努力のいる集中。
⑦：ディヤーナ（瞑想）
今の感覚に心を添わせること。心の動きに気づいているため、集中が途切れてもまたすぐに戻ることができる。
⑧：サマーディ（三昧）
今に集中している状態。心が定まっている状態。
ヨーガ・スートラでは、生活習慣の見直しから始まり、少しずつ身体や心を整えて行くことで、心が安定し、幸せを感じる時間が増えていくと考えられています。
8つのステップは3段階に分けられる
先程お伝えしたように、八支則には8つのステップがありますが、実は3つの段階にわけることができます。
- 第一段階 マットの外で行う心得の段階 (①ヤマ/ ②ニヤマ)
ヨガを行う前段階で、必要となる考え方の習得段階です。
この心得を習得していないものはマットに上がる資格がないとまでいわれていました。
- 第二段階 マットの上での動きの段階 （③アーサナ/ ④プラーナヤーマ）
私たちが一般的に「ヨガ」と呼んでいるのはこの二段階目を指します。
呼吸とポーズに気をつけて実際に体を動かしている段階です。
- 第三段階 心の動きの段階 （⑤プラティヤハーラ/ ⑥ダーラナ/ ⑦ディヤーナ/ ⑧サマーディ）
第二段階で体を整えたら、ヨガの最終目標「悟り」へと向かうため、意識を自分の内側に集中させ、深い瞑想状態へ入っていきます。
以上のように①〜③の段階を踏んで一連を通してヨガと呼びます。
八支則ひとつひとつのステップを詳しく解説していきます。
八支則を詳しく解説
①：ヤマ(禁戒)
日常生活において行わない方がよいこと
その中に更に5つの教えがあります。
1:アヒンサ（Ahimsa）／非暴力、不殺生
いかなる生きとし生けるものも殺してはいけない。行動、言葉、思考のレベルで他者に暴力をふるってはいけない。
誰に対しても怒りを抱かないこと。
もとの語源は、”苦痛を引き起こさないこと”。
自分自身を大切にしましょうという事です。
2:サティヤ（Satya）／嘘をつかないこと
自分の利益やエゴを守るために、嘘をついてはいけない。ただし、他者を傷つけるようなことであれば、真実であっても言わない。
その場合は、きちんと言わない理由を正直に言えばよい。第一にアヒンサ（非暴力）が優先される。
嘘をつかずに誠実でいるためには、言動、言葉、思考を日頃から一致させることを心がけ、自分に正直に生き、心が穏やかな状態でなければなりません。
3:アスティヤ（Asteya）／不盗
他人の物、時間、信頼、権利、利益などを盗んではいけない。自己中心的な行動はやめなさいという教え。
自分自身がちっぽけな肉体だと思うところから、その肉体の感覚を満たそうと執着が生じたり、地位や名声、よい評判を得ようというエゴが生まれる。
約束の時間に遅刻したり、行列に割り込んだり、 相手の話をきちんと聞かずに遮って自分が話すことも他人の時間を盗んでいることとされ、アスティヤ（不盗）に反します。
物やお金、地位、名声など、常に変化し続ける外の世界には真の幸福はありません。
人間関係や楽しかった思い出など、どのような事柄にも執着しない状態でいましょう。
4:ブラフマチャリヤ（Brahmacharya）／禁欲
もともとは、性欲に代表されるような、エネルギーの無駄使いをしてはならず、生涯を独身で過ごすことが説かれていた。
現代では、パートナー以外の異性とむやみに性的関係を持たないことの他、利己的な欲を満たそうとするのは避けることとされている。
生命エネルギーは必要なところに集中させることが禁欲の本質です。
5:アパリグラハ（Aparigraha）／不貪
貪欲さを捨てること。次から次へと湧き起こる、尽きることのない欲望に身を任せない。何かを必要以上に所有しない。
程度を超えた欲を持たず、独占欲を抑えることでもあります。必要以上に所有すると、執着がわいて、それを失うことへの恐れや他者への怒りと嫉妬を生みます。
アパリグラハの実践は、外の物質世界に縛られず、自らに満足感をもたらし、寛容になり他者から奪うのではなく、与えることにつながります。
②：ニヤマ(勧戒)
日常生活において行った方がよいこと
ニヤマもヤマと同様に、更に5つの教えがあります。
1:シャウチャ（Saucha）／清浄
自分の心と身体をいつも綺麗な状態に保つこと。他人に不快感を与えないように、身だしなみを整えることももちろんのこと、身の回りの空間を清潔に保つことも含まれる。
心の清浄さとは、嫉妬や嫌悪などネガティブな感情と思考を排除するように心がける事。
慈悲喜捨の精神。
不幸な人には憐憫の情を、立派な人がいたら自分もそうありたいと精進し、嫉妬するのではなく敬う。
受け入れ難い人がいたら、攻撃するのではなく距離を置き、反面教師として精進しましょう。
2:サントーシャ（Santosha）／知足、満足
今あるものに、常に満足すること。自分の周りにあるもの（環境や今置かれている状況、人間関係、自分の能力、健康などの物質的なものすべて）
ヨガの基本的な思想のひとつは因果律。今置かれている状況は先に何か原因があり、ここに理由があって必然であると考える。
あるがままの姿、それらはもうすでに完璧である。
そして今、どんなに苦しく思える状況でさえも、実は成長のためのステップアップの機会であり、そこに何かしらの判断を加えることは無意味である。人は身の回りの物事は当たり前だと勘違いし感謝を忘れ、失ってからようやくそれらが、かけがえのないものだったことに気が付く。健康も愛する人の存在、目の前にある物や今呼吸ができていること、自然や空気も同様に。
また、人の欲望は尽きることがなく、外の状況や変化してしまう諸々のことに幸福を求める限り、真の幸福は見つからない。
自分自身で、今あることに感謝をし満足することが真の幸福への近道です。
3:タパス（Tapas）／苦行、自制
精神鍛錬のために困難なことを実行すること。または、人間として生きていく限り避けられない人生のさまざまな困難を受け入れる強さを培うこと。
ただし、ただ単に自分を痛めつけたり、我慢することはアヒンサ（非暴力)に反する。
どんなに苦しい状況や試練に出逢っても、自分の成長の糧として受け入れられる強さを養うために実践しましょう。
4:スヴァディアーヤ（Svadhyaya）／読誦、学習、向上心
心を調える働きを持つ書物（聖典、マントラ、名著、人格者が書いた本、本質的なことが書かれている本など）を読むこと。
自分の心を善い方向に導いてくれる本を読むこと。実生活を通して得た知識を知恵へ昇華させ、人格を成長させましょう。
5:イーシュワラ・プラニダーナ（Ishvarapranidhana）／自在神記念、信仰
唯一絶対なる存在（宗教では”神”と表現される）に信仰心を持ち、それに祈りを捧げること。 自らに備わっている神性を信じること。
万物に対して、感謝と尊敬の気持ちを持ち、献身的な心を持って生きようとすること。
自分ではどうすることもできないこと（自然の力、時代の変化など）を受け入れ、身を委ねることです。
③：アーサナ(坐法)
座って瞑想していくために、カラダを整えること（ヨガのポーズ）
瞑想を深めるための座法。もともとは単なるポーズではなく、瞑想を行なうための姿勢や道具を指すアースが語源である。
様々なポーズの実践により、体を鍛錬し、長時間の瞑想に耐えうる状態をつくる。また、心と体はつながっているので、身体能力の向上は、心の調整にもつながる。
ポーズは、安定していること、快適であることが理想形。そして、冷静かつ客観的に、自分の身体感覚や心の状態を観察し、他者と自分を比べたり判断することなく、こだわりをなくし、その空間とひとつとなるような感覚で集中していきます。
④：プラーナヤーマ(調気・呼吸法)
意識的に呼吸を整えることで心を自分の呼吸に沿わせること
瞑想を深めるために呼吸を整えること。「プラーナ」は生命エネルギーのこと。「プラーナヤーマ」は、呼吸をコントロールすることによって、体内の見えないエネルギーを調整することを指す。
心と体の状態はつながっていて、呼吸が落ち着いて安定してれば心も穏やかで、体はリラックスする。
呼吸のもうひとつの目的は、血液や脳により酸素や影響を与えること。
理想的に呼吸を深めていくためには、正しい姿勢を心がけることが必要。つまりアーサナの実践を通じ、身体を鍛錬することが必要になります。
⑤：プラッティヤハーラ(制感)
カラダの感覚をありのまま感じること
感覚への意識を深め、繊細に感じること。外側に向いている五感の知覚を、内側に方向づけ、内的感覚を高める。
感覚を内側に向ける練習をしなければ、瞑想の境地に到達することはできない。感覚に意識を向け続ける。
アーサナを実践していても、決して、感覚を我慢したり抑えつけたりするのではなく、それを感じている自分を常に冷静に客観視していく。
これは、日々沸き起こってくる様々な出来事や問題に、感情を振り回されるのではなく、何が起ころうともブレない自分を作る精神の鍛錬につながっていく。
この先の「ダーラナ」「ディアーナ」「サマーディ」の3段階は、区切りの付けられない一連の心の流れとなる。
それぞれ、瞑想状態の深さの程度が異なります。
⑥：ダーラナ（集中）
今の感覚に心を添わせること。心が今にとどまることを学んでいる段階。努力のいる集中。
意識を特定の対象物に長時間留めておくこと。心が集中すればするほど、一点に向かう大きなパワーが生まれます。
⑦：ディヤーナ（瞑想）
今の感覚に心を添わせること。心の動きに気づいているため、集中が途切れてもまたすぐに戻ることができる。
仏教の〈禅〉は、サンスクリット語で(瞑想）を意味する、このDhyanaが語源。意識が積極的な努力なしに一方向に深く集中している状態。
プラティヤハーラ（感覚の制御）とダーラナ（集中）が深まっている状態。自分と他を分け隔てなくなった意識の状態。
雑念から解放された無我の境地です。
⑧：サマーディ（三昧）
今に集中している状態。心が定まっている状態。
ヨガの最終目標。悟り。梵我一如。煩悩からの解放。解脱。
瞑想がさらに深まり、集中の対象との一体感を感じている状態。
瞑想の状態をかなり長い時間維持できるようになったらサマーディの状態に入ります。
ヨガの八支則を生活に取り入れて、心穏やかに過ごそう
ヨガ八支則の8つの段階の土台となっている、「ヤマ」「ニヤマ」は日常生活で心がけることが出来ます。
自分の内側に意識を向け、自分の気持ちに気づくことで、心が穏やかになり、他人との付き合い方やコミュニケーション能力も向上していきます。
ひとつずつでいいので、日常生活でも実践し取り入れていきましょう。
yoga＆pilatesラポール代表
imazero編集長
串 貴代加